最近の世相を表すものとして、「コミュニケーション能力の衰退」があげられますが、その結果本来は「話し合い」にゆだねるべき事象を力で解決しようとします。もともと人間の記憶は「忘れる」ことを可能にすることで未来志向になるのですが、「今でしょ!」という掛け声とともにさまざまな「憎しみ」がまるでパンドラの箱を開けたように噴出しているようです。
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死後離婚」もその一つでしょうか。(死後離婚を明確に表す英語は無いようです)
「夫と一緒のお墓や先祖代々のお墓に入りたくない」と夫が亡くなった後、籍を抜く妻が増えてきているそうです。このように配偶者の死亡後に婚姻関係を解消することを「死後離婚」と呼んでいます。同じ「離婚」でも夫婦が存在している場合と違い、民法第728条による条文を使います。
@姻族関係は、離婚によって終了する。
A夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
この条文の『姻族関係終了届』を提出することで、姻族(配偶者側の親族)との関係を民法上他人に戻すことができます。相手方の同意は必要ありません。これにより、姻族の扶養義務がなくなり、提出したその日から効力が発生し、姻族の墓に入る必要性や墓の管理義務なども負わなくなります。
ただし、届を出しても姻族との関係がなくなるだけで、亡夫との関係は変わりません。つまり、遺産はもちろん、遺族年金も死後離婚前と変わらず受け取れるのです。
正式には「姻族(法律上の親族)関係の終了」ということになりますね。ではなぜ、配偶者が死んだ後に、法的には意味のない(メリットもデメリットもない)離婚をするのでしょうか。
最大の理由は「亡くなった配偶者の両親や兄弟と仲が悪い」場合でしょう。たとえば、夫の存命中義父母と同居しており、他にこの義父母の扶養義務者がいないなど特別な事情がある場合、家庭裁判所の決定などで、夫の死後も義父母の扶養義務を負うというケースがありえます。
折り合いが悪い義父母の面倒を、どうして私が見なくちゃいけないの!」ということで、妻と子供が姻族関係を終了させ、面倒を見ない・あるいは夫の墓の面倒も見ないなどということですね。
このようにすると「気持ち」の面でのメリットはとても大きいと思います。
死んでから離婚することの善悪を考えることは難しいのですが、やはり普段から「話し合う」ということが問題解決の唯一の方法だと思います。夫婦や家族のの問題は、どちらか一方が100%悪いということはほとんどありません。境界性パーソナリティ障害や統合失調症など脳の病気の場合は別にして、「話し合う」ことが大切だと思います。
自分が死んだあとが心配な方は、お気軽にご相談ください。